インターン夏休みレポート:石材店見学

残暑お見舞い申し上げます。
鎌倉新書、学生インターンの大村です。

お盆休みが終わり、東京がまた賑やかになっていますね。今年のお盆、皆さまいかがお過ごしだったでしょうか。
私は、実家が愛知県にあるので、愛知に帰省し、家族・親戚とお墓参りに行ってきました。また、祖母の家の仏壇に手を合わせてきました。
鎌倉新書に入社して、お墓や仏壇について勉強し始めてから初めてのお盆休みは、いつものお盆と違った新鮮な気持ちで過ごすことができました。

私の実家がある愛知県は、石材や仏壇産業が盛んで、特に岡崎市の石材や名古屋仏壇三河仏壇が有名です。
普段の業務では現場の最前線を直接見ることは、ほとんどありません。
そこで、直接現場を見て、現場で実際に活躍される方のお話を聞いて見識を広めることを「鎌倉新書インターンの夏休み課題」として与えられました。
今回、愛知県に帰省する機会を利用して、岡崎市の石材店、名古屋の仏壇店を見学させていただきました。まずは、かましん広報ブログにて、その様子をそれぞれ報告させていただきます。


見学させていただいた石材店は、愛知県岡崎市にあります矢田石材店で、お話いただきましたのは、代表取締役の矢田敏起さんです。矢田さんはお墓職人として愛知県を中心に活躍されています。墓石建立だけでなく、お墓参りを通した人間教育を提唱する「墓育」というNPO法人を立ち上げ、お墓参りを行うことを啓蒙されています。また、この8月10日に心が強くなるお墓参りのチカラ(経済界)を出版されました。

このように、お墓について多方面でご活躍されている矢田さん。お墓のことだけでなく、石のこと、お墓参りのこと、様々なお話を伺うことができました。

私が鎌倉新書に入社して、もうすぐ半年になりますが、まだまだ分からないことだらけです。供養離れが主張されているが、実際の現場はどのような影響を受けているか。石の価値や値段はどう決まっているのか。そもそも、何故お墓は石なのか。何故お墓が存在するのか……。きっと消費者の方も感じているであろうこれらの疑問を矢田さんに投げかけました。

【供養離れの実態について】
供養関連のニュースを見ていると「供養離れ」という言葉をよく目にします。お墓だけでなく葬儀や仏壇業界でも「供養離れ」が問題となり、その対策が業界全体で求められ、話題になっています。
実際に、お墓業界の現場における供養離れの実態とはどのようなものなのでしょうか。

「供養「離れ」というより若い世代が供養について知らないのでは。好き好んで離れているわけではないのではないか。」と矢田さんはおっしゃられました。
お墓参りがしたくないわけではなく、出来ないから、供養離れが進んでいるのではないかということです。親の世代が故郷から離れて働いているため、普段からお墓に接することがないために、お墓について知ったり、考えたりする機会が減っています。特に自動車工業の盛んな愛知県は、団塊ジュニア世代の多くが地方から労働力として移り住んできました。親の実家が地方で、行く機会もなかなかない今の若者世代は、お墓に接する機会も知る機会もないために、お墓や供養に関心が持てず、「供養離れ」という現象が起きているのだと矢田さんは考えます。

そこで矢田さんは、まずはお墓や、お墓参りの良さについて知ってもらおうと、本を出版したり、墓育という一般社団法人を立ち上げたりと活動しています。墓について知ってもらえれば供養離れなんて絶対におきない!と矢田さんは力強くおっしゃいました。
消費者のニーズに合わせた商品開発や提案も大切ですが、「供養離れ」の一番の対策は、わたしたち業界の人間たちが、きちんと供養することの良さや大切さを発信することなのかもしれません。

【石の価値は何で決まる?】
お墓についてよく分からないのは、石の価値。石の産地やブランドによって、石の値段は随分と変わるようですが、私が素人目に見ても、どの石が素晴らしいものかなんて当然分からず、そもそも石と石の違いすらよく分からない……。

石の質を表す基準は4つあるそうです。
まずは吸水率。長い期間屋外に置かれる墓石は雨風の影響をモロに受けます。吸水率が低い方が雨などの影響を受けにくく、汚れにくいそうです。
次に圧縮強度。強度が強いほど硬い石なのですが、強ければ強いほど欠けにくいというわけでもないようです。
そして重さを表す見掛比重。そして産地。これらの基準が石の特質を表します。
「ただ、質によって人気の出る石はまずないですね。結局は見た目の美しさなんです。」と矢田さん。ブランド石と言われる石の質は、必ずしも全ての要素の数値が高いというわけではないようです。
ただ、いくつかの石を見ても、やはり素人にはさっぱり分からず……。どの石も、綺麗に磨いてありますし、ブランド石でなくとも十分美しく見えます。
「ブランドに左右されるのではなく、自分で判断することが大切です。どんなに良い石でも「○○家之墓」と彫ってしまえばその石の価値は家族にしかありません。だから家族が石の価値は判断すれば良くて、市場の価値基準に左右される必要は全くありません。」
ブランドとして高く売られている石は、必ずしも質が良いわけでも、美しいわけでもないようです。ブランド石か否かは、石そのものの価値ではなく、石を掘り出す山や、石材店の売り出し方の上手さが決める。そう矢田さんはおっしゃいます。
だから石を買う時は自分で見て判断することが何より大切。矢田さんはお客様と契約する際もいつもこのことをお話されるそうです。石の価値は資本主義とも市場原理とも違うルールで決定され、動いているのだと感じました。

【お墓が石で出来ている理由】
近年、墓石以外の供養の形が提案されることが多くなりました。散骨や手元供養、東京都立霊園に今年登場した樹木葬などが話題を呼んでいます。このように、墓石以外の形の供養方法を知ると、では何故今まで石ばかりだったのだろう、お墓が石で出来ているのは何故だろう、と改めて疑問に思います。
何故お墓が石で出来ているかを考えるためには、まず墓が何故あるかを考える必要があります。お墓は生きている人の、死への恐怖から生まれました。人は、死んだらすべて消えてなくなるのが怖かったのです。死後も終わらない、なくならないものを作ろうという思いが墓という形式を生みました。
確かに、ピラミッドや古墳も、当時の権力者が死後の世界に自分の権力を示すために作ったものだと昔々に歴史の事業で習った記憶があります。それと同じなんですね。

死後も消えないもの……ということで墓の素材に石が選ばれたということです。死後も消えないものということで変わらない、壊れない、永続性のある素材が求められます。樹木も、コンクリートも、やがて朽ち果てます。しかし、石は自然界に存在する素材の中で、おそらく最も永続性のあるものです。
我々人間は、この永続性のあるものに自分たちを置き換えることで、自分たちが消えてなくならないと感じ、安心します。だから、墓は石でなくてはならないと矢田さんはおっしゃいます。永続性の低い、樹木や他の素材ではやがて自分が忘れ去られてしまいます。

【お墓が必要な理由】
それでも近年、お墓が厄介者扱いされているのを見ると、墓が本当に必要なのかどうか不安になります。お墓参りに頻繁に行くことが出来ない人が多く、今年のお盆にはお墓参り代行を依頼する人が増えたことがニュースになりました。また、後継がおらず、無縁墓になって荒れてしまう墓も近年多いようです。
そのため、子供や子孫に迷惑をかけたくないという思いからお墓を持ちたがらない方が増えています。このような社会情勢の中でも、やはり墓は必要なのでしょうか。
「自分の子供と向き合えていないからお墓が残せない。」墓を持ちたがらない人が多いことに対して、こう矢田さんは語ります。
「親の死ほど子供が成長する機会はありません。親の面倒も見れない子供が一人前になるとは思えません。親の死の面倒を見ることが、子供の一番の成長の糧になるのに、それを取り上げてしまうのは酷い話。子供が親の死と向き合うためにも墓は絶対に必要です。」
幼い頃にお母様を亡くされた経験からこのように語る矢田さんのお言葉は、とても深く、私の心に入ってきました。
お墓は、故人のためというより、残された人たちのために存在するのかもしれません。お墓があって、お盆に家族が墓参りのために集まることによって、故人は亡くなっても親としての役割を果たし続けることができます。

石材のことだけでなく、お墓のことやお墓参りについての想いなど、とても熱く語っていただき、とても勉強になりました。
矢田さん、本当にありがとうございました。


このお盆に帰省できず、お墓参りに行くことができなかった方も、これを機会にお墓参りに行ってみてはいかがでしょうか。