「手を合わせてつながる絆」その後(1)

皆様、こんにちは。
鎌倉新書広報部の大村です。


昨年、弊社が運営するサイト「いい仏壇.com」では「手を合わせてつながる絆」という公募を行いました。

仏壇に手を合わせることは、故人や先祖と家族のつながりの大切さを実感する良い機会になります。この仏壇文化を後世に継承していくため、お仏壇にまつわるエピソードを皆様から募集いたしました。たくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。
ご応募いただいた皆様の作品を読んでいくと、仏壇が家族の集まるきっかけになったり、心を落ち着けるきっかけになったりしていることが分かります。時々、思わず涙腺が緩むようなエピソードも……。

皆様の作品を読んで、お客様の購入前の心の動きや、購入後の付き合い方を知ることで、私たちはより良いサービスをご提供できるのではないかと感じました。
仏壇購入前、購入後の話をもっと聞きたい!
そう思い、「手を合わせてつながる絆」で受賞された方に会いに行くことにしました。


最初にお会いしてくださったのは岐阜県各務原市の成瀬富貴子様。
エッセイによると家族が誰も亡くなっていないのに、子育てのために仏壇を購入したというのです。
仏壇といえば、亡き人を供養するためのものというイメージがありますが、子育てのためとはどういうことなのでしょう……どんな話が聞けるのかわくわくして成瀬様のお宅を訪ねました。

仏壇購入のきっかけは、成瀬様が好奇心旺盛なお孫さんを預かり、育てることになったことでした。
好奇心旺盛なT君はとにかくじっとしていられない子。電化製品でいたずらをしたり、家中を水浸しにしたり……。じっと座ることも、人の目を見て話を聞くことも出来なかったと言います。
この子をどうにか落ち着きのある子に育てたい。そこで成瀬様が考えついたのが仏壇を置くことだったのです。
ご自身の人生を振り返った時に、大切な話は仏壇の前でしたこと、結婚式や法事など人生の節目は仏壇の前で過ごしたことなどを思い出したそうです。また、仏壇の前ではじっと座って手を合わせていたことにも気づきました。
きっとお仏壇なら助けてくれる、T君がじっと座るきっかけを与えてくれる。そう思って仏壇の購入を決意したといいいます。

タイミングよく入ってきた広告を見て、早速予算と好みにあった仏壇を購入。その仏壇を見せていただいたのですが、落ち着きのある立派な唐木仏壇でした。

しかし、ただ仏壇を購入するだけではT君は当然落ち着きのある子に育つわけではありません。最初は、仏壇の前で座らなかったり、線香をぐちゃぐちゃに折ったりしていたそうです。
そこで成瀬様が考えたのは、仏壇の前に大好物を供えること。
T君大好物の果物をお供えし、毎日手を合わせました。お供え物に気づいて、T君は仏壇に近づきます。お供え物に手を伸ばすT君の手を成瀬様はすかさず叩き、「これは仏様のもの。勝手に食べたらバチが当たる!」ときつく叱ったそうです。
お供え物を食べるには、仏壇の前に座って手を合わせなければならない。最初は嫌々でしたが、このようにしてT君は仏壇の前に手を合わせるようになりました。
やがて、T君にとって最愛の祖父、成瀬様にとっての旦那様がお亡くなりになりました。T君は積極的に仏壇の前に座り、毎日手を合わせるようになりました。
好奇心旺盛でいたずら盛りだったT君も、今では中学生。「おじいちゃんが亡くなったとき、最初は悲しかったけど、仏壇の前に座ればおじいちゃんと向き合っている気がする。うまく表現できないけれど、仏壇の前では心がきれいになる気がします。」とお話してくれました。

「宗教の云々はよく分からない。仏壇の知識もない。ただ、そんなものは私たちには必要ないのです。そこに仏壇があるだけで、いたずら盛りの子供も含め、家族がじっと座って目を閉じ、落ち着くきっかけになっているんですよ。」そう成瀬様はおっしゃいます。


実際にお宅にある仏壇を見せていただき、心温まるエピソードを聞き、仏壇が落ち着きある家庭を支えていることを感じました。
言われてみれば、家族がじっと座って手を合わせ、考え事をする機会は少ないもの。お子さんなら尚更です。
仏壇は家族が内省する、良いきっかけになるということを知りました。
そして、仏壇にはご先祖様や亡き人を供養する以外の力も持っているのだと感じました。

今回のインタビューは、普段なかなかお聞きすることのできないことを聞くことが出来、貴重な経験となりました。
お客様のお話は、普段なかなか聞く機会がありませんが、有意義な情報をたくさん聞けるのではないか、そんなことを感じました。これから少しずつ、お客様の声を直接お聞きする機会をつくっていこうと思います。

インタビューに応じてくださった成瀬様、成瀬家の皆様、ありがとうございました!